推しログ(ぬ)
配信・推し活の知識

配信で心拍数を見せる方法の比べ方 ― 心拍ベルト・スマートウォッチ・Pulsoid・ブラウザだけで出す仕組み

ホラーゲームやASMR、緊張する場面のあるゲーム配信で、画面の端に心拍数が出ているのを見たことはありませんか。あの数字を出すのに、特別な設備は要りません。ただ、方法がいくつもあって、機器の種類、使うアプリやサービス、ブラウザの対応で、できることが変わります。この記事は、これから始める人向けに、心拍を取る機器の違い、心拍を配信画面に届ける主な道、Bluetooth の標準とブラウザの対応、つまずきやすい点、心拍が健康のデータであることの注意をまとめたものです。特定の製品をすすめる記事ではありません。

公開

心拍が配信画面に出るまでの流れ

どの方法でも、流れは同じです。まず機器が心拍を測ります。その値を、スマホやパソコンのアプリ、またはブラウザが受け取ります。次に、インターネット上のサービスか、自分のパソコンの中のプログラムが、配信ソフトで表示できる形にします。最後に、OBS などの配信ソフトに「ブラウザソース」として取り込むと、画面に数字が出ます。

比べるときの軸は 4 つです。心拍を取る機器、機器から値を受け取る側(アプリかブラウザか)、値を配信ソフトまで運ぶ仕組み、そして途中のどこで遅れやすいか。順に見ていきます。

心拍を取る機器の種類と、精度の一般的な違い

機器測り方向いている場面気をつけること
胸ベルト胸に巻いて、心臓の電気信号を拾う動きの多い配信、正確さを優先したいとき巻く手間がある。肌に当てて使うので、乾いていると拾いにくいことがある
腕に巻くバンド腕に当てた光で血流の脈を読む(光学式)胸ベルトは窮屈だが、時計よりは安定させたいときずれると値が乱れる。ゆるすぎない位置に固定する
腕時計・スマートウォッチ手首に当てた光で血流の脈を読む(光学式)すでに持っているものを使いたいとき機種によって、値を外に出す設定や専用アプリが要る。更新の間隔も機種しだい

精度については、研究がいくつかあります。たとえば 2017 年に米国心臓病学会(ACC)の学会で発表された 50 人ほどの研究では、運動中は、胸ベルトのほうが手首の光学式より正確で、手首の機器は安静時のほうが合い、運動中は誤差が大きくなる傾向が出ました。胸ベルトは心臓の電気信号を、手首の機器は光で血流を読むので、手首は動きや装着の具合の影響を受けやすい、という説明です。小規模で、当時の機器での結果なので、今の製品にそのまま当てはまるとは限りません。それでも、「動く配信なら胸ベルトのほうが安定しやすい」という見方の根拠としては使えます。

出典: ACC のプレスリリース(手首の心拍計は胸ベルトより正確さで劣る)。Pulsoid の公式ページも、正確さを求めるなら専用の胸ベルトをすすめています(Pulsoid の対応機器のページ)。

Bluetooth の標準があるので、多くの機器がそのまま使える

心拍ベルトやバンドの多くは、Bluetooth Low Energy(BLE)で心拍を送ります。この送り方には、Bluetooth SIG(規格を決めている団体)が定めた標準があります。心拍を出す機器(Heart Rate Sensor)と、受け取る側(Collector)の役割を決めた Heart Rate Profile、その中身にあたる Heart Rate Service です。Heart Rate Service は、心拍センサーの心拍などのデータを、フィットネス用途で公開するための仕組みとされています。この標準に沿った機器なら、メーカーが違っても、受け取る側が同じ読み方で値を取れます。

出典: Bluetooth SIG の Heart Rate Profile、Heart Rate Service。

「標準に沿っている」ことと、「いつでも心拍を出している」ことは別です。時計やリストバンドは、心拍を外に出す機能(ブロードキャストや心拍の共有といった名前のことが多い)を、自分でオンにしないと出さない機種があります。

ブラウザだけで受ける Web Bluetooth と、使えるブラウザ

Web Bluetooth は、Web ページが、近くの Bluetooth 機器に JavaScript から直接つなぐための仕組みです。心拍の標準を使う機器なら、アプリを入れずに、ブラウザのタブだけで心拍が読めます。機器を選ぶ画面は、ボタンを押すなど、ユーザーの操作のあとにだけ出せます。また、HTTPS のページでしか使えません。

ブラウザ・環境Web Bluetooth
Chrome(Windows 10 以降・macOS・ChromeOS・Android)使える
Chrome(Linux)標準では無効。設定の変更が要る
Edge使える(Chrome と同じ Chromium のため)
Firefox使えない
Safari(Mac・iPhone)使えない

MDN の互換性表では、Firefox と Safari(iOS の Safari や WebView を含む)は「未対応」とされています。MDN 自身も、この機能は主要なブラウザの一部で動かず、実験的な技術だと注意しています。iPhone では、ブラウザだけで心拍を受ける道は取れないと考えておくのが安全です。iPhone で心拍を配信したいときは、次の節のように、専用アプリを経由する道を選びます。

出典: MDN の Web Bluetooth API(互換性表を含む)、Chrome for Developers の Bluetooth の解説。

Web Bluetooth は、ブラウザの安全のために、ページが勝手に機器を探すことを許していません。「機器を選ぶ」ボタンを押して、見つかった一覧から自分で選ぶ流れになります。

Pulsoid・HypeRate などのサービスの位置づけ

心拍を配信画面に出すサービスは、機器やアプリから心拍を預かって、OBS などで表示できる「ウィジェット」のアドレスを出す役目をします。代表的なのが Pulsoid と HypeRate です。公式の説明で確かめた範囲で、並べます。

PulsoidHypeRate
心拍の入れ方スマホの専用アプリ(iOS・Android)が機器から読んで送る。Apple Watch・Wear OS 向けのアプリもある専用のモバイルアプリが機器から読んで送る。BLE の心拍機器なら、Chrome で開く Web Bluetooth のページからもつなげる
配信画面への出し方ウィジェットのアドレスを、OBS などにブラウザソースとして追加発行されたアドレスを、OBS などにブラウザソースとして追加。OBS 用のプラグインもある
無料の枠ある(心拍の配信は期限なしで使える。機能を増やす有料プランもある)はじめるのにアカウントは要らないと公式が案内している。料金や無料の範囲は公式サイトで確かめる
公式の主な注意Garmin は BLE の心拍の共有に対応した機種のみで、ANT+ では使えない。Apple Watch は心拍の測定が約 5 秒ごとと公式が説明しているApple Watch・Wear OS・Garmin など機器ごとに別のアプリが案内されている。対応機種は公式の一覧で確かめる

機種の対応や無料の範囲、料金は変わります。使う前に、必ず各公式ページで、手元の機器が対応しているかを確かめてください。出典: Pulsoid の FAQ、Pulsoid の対応機器、HypeRate の公式サイト、HypeRate の Web Bluetooth ページ。

道を選ぶときの目安

  • 胸ベルトかバンド+PC の Chrome / Edge:アプリを入れず、ブラウザのタブで受ける道です。タブを開いたままにする必要があります。
  • 胸ベルト+スマホの専用アプリ:スマホで受けるので、PC のブラウザの対応に左右されません。iPhone ならこちらです。
  • 時計+時計用のアプリ:すでに持っているものを使えますが、機種ごとの設定と、測定間隔の確認が要ります。

配信に出すまでの流れ(ブラウザソース)

  1. 心拍を取る機器を決めて、つなぐ胸ベルトなどは、肌に当てて、心拍の共有(ブロードキャスト)が出ている状態にします。時計は、心拍を外に出す設定か、専用アプリを使える状態にします。
  2. 受ける側を開くサービスのアプリ、または PC の Chrome / Edge の対応ページを開き、機器を選びます。数字が動いたら、ここまでは成功です。
  3. ウィジェットのアドレスを控えるサービスで、表示用のアドレス(URL)を発行します。デザインや大きさが選べるサービスもあります。このアドレスは人に見せず、配信ソフトにだけ貼ります。
  4. 配信ソフトにブラウザソースとして追加するOBS などで、ソースに「ブラウザ」を追加し、アドレスを貼ります。位置と大きさを決めたら、配信しないまま、数字が動くことを確かめます。
  5. 本番の前に、数字が止まらないことを見る通しで数分、心拍を出したままにして、数字が止まったり、固まったりしないことを確かめます。

つまずきやすいところ

機器が一覧に出ない・つながらないとき: 心拍を外に出す設定(ブロードキャスト、心拍の共有)がオフになっていないか確かめます。Pulsoid の公式ページでは、Garmin は BLE のブロードキャストのモードをオンにし、WHOOP もアプリ内の共有の設定をオンにする、と案内されています。機器によっては、すでに別のアプリにつながっていると、ほかから見つからないこともあります。

Garmin の時計が使えないとき: ANT+ だけで心拍を送る設定は、Pulsoid では使えないと公式が案内しています。BLE で送れる機種かどうかを確かめます。

接続が途中で切れるとき: 胸ベルトの電池切れや、肌から浮いたことが原因のことがあります。ブラウザで受けている場合は、タブを閉じたりスリープに入ったりすると止まります。受けている画面を開いたままにしておきます。

数字が遅れる・とびとびに見えるとき: 遅れは、機器の測定間隔、アプリやサービスを経由する分、配信そのものの遅れ(見ている人の画面は、さらに遅れて届きます)が重なって出ます。時計は、測定が数秒おきの機種があるので、動きの速い場面とは合わないことがあります。

ブラウザで「機器を選ぶ」が出ない・押せないとき: Firefox や Safari、iPhone のブラウザでは、Web Bluetooth が使えません。Chrome か Edge に替えるか、専用アプリを使う道に切り替えます。

心拍は健康のデータ ― 出す範囲と止め方

心拍数は、体の状態に関わるデータです。見せるのは配信の演出としてでも、見ている人には、緊張しているか、落ち着いているかといった、普段は見えない反応が伝わります。出す前に、次を決めておくと安心です。

  • どの配信で、どの場面で出すか:アーカイブや切り抜きにも残ります。見せたくない場面では、ブラウザソースを非表示にできるようにしておきます。
  • ウィジェットのアドレスとアクセストークンは、パスワードのように扱います。配信画面や共有画面に映したり、人に送ったりしません。Pulsoid の FAQ も、アドレスは人に見せず、漏れたらウィジェットを削除するよう案内しています。
  • 睡眠や活動量など、心拍以外のデータまで共有する設定になっていないかを、サービスや時計のアプリで確かめます。
  • 止め方を先に決める:配信ソフトでソースを非表示にする、受けているタブやアプリを閉じる、機器の共有をオフにする、サービスのウィジェットを削除する、の 4 つがあります。どれで止めるかを、配信の前に決めておきます。

表示される数字は目安で、診断や治療のためのものではありません。数字が気になったり、体調に不安があったりするときは、配信より先に、医療機関に相談してください。

推しログの心拍モニターの場合

推しログの心拍モニターは、この記事の「ブラウザだけで受ける」道を使っています。配信設定の「ブラウザから送る」で、PC の Chrome / Edge から BLE の心拍ベルトをつなぐか、Pulsoid のアクセストークンを入れると、ファンの推し部屋と Discord に心拍を出せます。受けているタブを開いている間だけ送り、閉じると止まります。Pulsoid のトークンは、使っているブラウザにだけ保存し、推しログのサーバーには送りません。

配信画面そのものに心拍を出す専用の表示は、いまはありません。OBS のブラウザソースに出したいときは、この記事で紹介した Pulsoid や HypeRate のウィジェットが向いています。手順は心拍ベルトや Pulsoid の心拍を、ファンの推し部屋と Discord に出す方法 に、機能の紹介は 心拍モニターの案内ページ にあります。

ガイド一覧へ